腐葉土の作り方

家庭菜園・畑作りの雑記
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 家庭でも作りやすい腐葉土。落ち葉や雑草が手に入りやすい場所であれば、簡単に作ることができます。

 今回はその腐葉土についてお話したいと思います。

腐葉土とは

腐葉土は落ち葉で作られた、土づくり堆肥です。

 腐葉土は主に落葉を堆肥化させたものであり、落ち葉堆肥に区分されます。肥料分は少なく、土をフカフカにする土壌改良目的で使われます。

 堆肥には肥料分が少ない「土づくり型堆肥」と、豚糞堆肥や鶏糞堆肥のような肥料分が多い「有機質肥料型堆肥」がありますが、腐葉土は土づくり堆肥として区分されます。

 腐葉土を畑に入れると、土壌微生物が活発になります。この微生物の働きで、土の栄養分が植物が吸収できる状態になり、また微生物の効果により畑の団粒構造が作られて、水はけ・水もち・通気性が改善し作物の根が発達しやすくなります。

 ちなみに、牛ふん堆肥は肥料分が比較的少ないので土づくり型堆肥ですが、バーク堆肥や腐葉土よりも肥料分が含まれているので有機質肥料型堆肥としての機能も持っています。(土づくり型と肥料型の中間的な堆肥もある)

腐葉土の一般的な使用量

 腐葉土は肥料分が少ないため、たくさん土に入れても養分過多にはなりません。

一般的に腐葉土やバーク堆肥といった植物堆肥の適正使用量は、年1~2回のタイミングで1㎡あたり2~5kgです。肥料分が少ない特性があるので、土の状態を見ながらこれよりも多く施しても問題ないでしょう。

ただし、あまりに大量の腐葉土を1回で入れると土壌自体が柔らかくなりすぎて、作物の根が地上部分を支えられなくなり倒れることがあるのでほどほどに。

腐葉土の作り方(大まかな工程)

 微生物によって落ち葉を分解してもらい、できあがるのが腐葉土です。

 腐葉土の作り方にはしっかりと決まった方法はなく、アレンジ可能です。それぞれ皆さんがやりやすい方法で、腐葉土を作っています。発酵させる条件から大きく外れなければ落ち葉の堆肥化は様々な方法でできますので、堆肥化に必要な発酵の条件を満たすことが腐葉土作りで一番大切なことです。

腐葉土作りの大まかな流れ

①落ち葉を1ヵ所に集める(袋・木製の枠・土を掘った穴・プラスチックや段ボールのコンポスト…集める所は何でもOK)

②気温が温暖な時期に発酵を開始する。(寒い地域では厳冬期に発酵は進まない。水分も凍結し、微生物の活動はストップする。)

③微生物のエサを入れる(米ぬかや、窒素がたくさん入っている油かすなどの有機質肥料。米ぬかだけでもOK。)

④水で湿らせる(微生物の活性には50%~60%くらいの湿り気が良い。握って水気を感じる程度。握ってポタポタ滴るようなら水分過多。)

⑤何回か切り返しをして、空気を含ませる。(材質により回数は変わる。。落ち葉なら年数回は切り返しが必要。最初の1か月は1~2週間に1回、そのあとは月1回くらい切り返すと発酵効率が良いとされている。)

腐葉土の材料

 腐葉土の材料はこちらです。大体の量でよいのですが、目安となる分量も載せておきます。

大量の落ち葉 20L

米ぬか 100g

有機質肥料 100g(窒素が含まれている油かす・鶏糞など。入れなくてもOK。)

畑の土 2L

水 4L

 では次に、腐葉土作りの各工程の詳しい解説をしたいと思います。

腐葉土作りの作業① 落ち葉集め

 腐葉土を作る材料として優れているのは、ケヤキやモミジ・カエデなどの落葉広葉樹です。落葉の時期には大量に集めやすいです。

 主に落葉広葉樹の落ち葉を集めておくと、堆肥化が早く進みます。ただし落葉広葉樹でも、イチョウやサクラは微生物の働きを抑制する物質を含んでいるので、分解が遅くなることが知られています。遅くなるだけで堆肥化ができないというわけではありませんので、これらを腐葉土にするときは発酵に時間をかけ、切り返し回数も多くしていくと良いでしょう。

 マツやスギなどの針葉樹の葉も、葉が固く樹脂分が多いため分解はかなり遅いです。早くても分解に1~2年かかります。落葉広葉樹の落ち葉を集める過程で混ざってしまうことがありますが、少量の混入程度で済むようにするのがおすすめです。

 集めた落ち葉をどこで発酵させるかは、各家庭の状況に合わせて変わります。広い土地があるのであれば、空いた場所に穴を掘って埋めるように落ち葉を入れたり、大きな木枠を作ってそこに落ち葉を溜めたり、特に囲いなどはせずただ野積みにしておくだけの場合もあります。スペースが限られているのであれば、ビニール袋やコンポストなどを利用することが多いです。

 落ち葉を発酵させる過程で臭いが出たり虫が集まったりすることがあるので、近所へ影響が出ない場所で腐葉土作りを行うようにしましょう。(例えば、発酵の過程でアンモニアガスが発生しますが、これは長く掃除をしていないトイレのようなに臭いになります。のちに硝化菌の働きで肥料成分の硝酸に変換されていきますが、臭いによる苦情が出ないように隣の家から離した場所に置くのが良いです。)

 また微生物は紫外線には強くないため、なるべく直射日光が長く当たる場所を避けます。屋根のある場所に置いたり、日光を遮るシートで被うなどの工夫をすると良いです。

腐葉土作りの作業② 温暖な時期に発酵を開始する

 菌にはそれぞれ好む温度がありますが、土壌の多くの微生物(カビ・細菌)は30~40℃で活動が最大になります。落ち葉などの有機物を最初に分解してくれるのはカビの仲間である糸状菌です。15~40℃の低めの温度で活動できるので、いち早く他の微生物よりも先に植物の繊維を分解して酵母や放線菌のエサになる糖を作ります。発酵が進んで50℃くらいになると糸状菌は数を減らして、代わりに高温に強い乳酸菌や納豆菌が活躍していきます。

 まだ低温の発酵初期に活動できる糸状菌の生育最低温度が10~15℃ですので、気温が低下し落ち葉の中の温度がかなり低くなった状態だと、最初の有機物分解がなかなか進まず発酵過程は休止状態になります。

 温暖な地域であれば、ムシロやワラ、木の枠などで被い断熱性を高めて温度が下がらないよう工夫すれば冬季も発酵ができます。

 雪が降るような寒い地域では、屋内や地熱を利用できる特殊な環境でもない限り冬季の発酵は難しいです。特に真冬日が続く地域では、微生物の増殖に必要な水分すら凍ってしまい、落ち葉が冷凍保存された状態になります。落ち葉を穴に集めて作る場合でも、深い雪に覆われている時は地中は0℃付近に保たれますが、積雪により切り返し作業はできません。(ただし、地中深くに落ち葉を埋めた場合は冬の時期に切り返しはできないものの、完全に凍らず水分が保たれるため分解はゆっくり進むようです。)

 厳冬期が厳しい気候であれば冬に堆肥化を進めようとはせず、春になってから材料を投入して発酵を開始させる方が楽です。

腐葉土作りの作業③ 微生物のエサを入れる

 集めた落ち葉に、微生物のエサとなる米ぬかや油かすなどを入れます。米ぬかや油かすに入っている栄養素をエサにして、微生物がどんどんと増えていきます。

 米ぬかは、豊富にデンプンを含んでいます。デンプンは糖としてすぐにエネルギーに変換しやすいので、発酵初期の微生物増加ブースターとして最適です。そして微生物のエネルギーを作る過程で必要になるリン酸も多く含まれています。菌が働くにもエネルギーが必要なのです。

 窒素は菌の核酸や細胞膜などに使われる成分で、菌が増える際には有機物(炭素)と共に必要になります。米ぬかに含まれている窒素だけでも発酵は可能ですが、油かすや発酵鶏糞でさらに窒素を補充する方法もあります。

 この窒素が少ないと菌は細胞を作ることができないので、微生物は増えにくくなります。逆に窒素が十分にある場合は、細胞構成に使わなかった余剰な窒素を微生物がアンモニウム塩として外に出します。アンモニウム塩は硝化菌の働きで堆肥の栄養分の硝酸に変換されたり、アンモニアガスとなって空気中に出ていきます。

畑の微生物の力を借りる

 集めた段階で落ち葉の表面にカビなどの多くの微生物が付着していますが、多様な土壌微生物が既に住み着いている畑の土を入れると効果的で、畑の土から微生物が増えて発酵を進めてくれます。

積み重ねると材料同士の触れる面が大きくなる

 堆肥にする落ち葉の量がそれなりに多い場合は、材料を投入する際に落ち葉→米ぬか(油かす・鶏糞)→(畑の土)→落ち葉…と交互に積み重ねていくと、全体的に発酵が進んでいきます。最初に交互に重ねていれば、切り返しの際にも少ない労力で全体的に混ざった状態になりやすいです。

少量の腐葉土作りにおススメ 腐葉土作りの素

 簡単に腐葉土を作る有機質肥料として、便利な物も市販されています。私は腐葉土を作る際にはこちらを使っています。

微生物と有機質肥料が入った製品になります。この製品と米ぬかと畑の土を、落ち葉を集めたビニール袋に入れて作っています。何も考えず45Lの袋1つに5分の1の量を入れるだけなので、簡単です。1つで45Lの袋5個分が作れます。

腐葉土作りの作業④ 水で湿らせる

多くの生き物と同じで、細菌やカビなども生きるのに水が必要です。発酵で活躍する微生物の活動に最適な水分量は50~60%です。手で握ってみて軽く水分を感じる程度がベストです。ポタポタと滴る量だと水分過多になります。

水分量が少なすぎる又は多すぎるとどうなるか

 水分量が30%を下回ると微生物が活動しなくなり、発酵がストップします。

 また、水分量が多すぎると空気と触れる面が少なくなり嫌気性の細菌の活動が進んで硫化水素などのガスを発生させます。そうなると強い悪臭を放つようになります。臭いがすると虫も集まるようになります。

 発酵初期で活躍するカビは好気性菌なので、水分が多く空気に触れられないと生きられずいなくなってしまい、そうなると落ち葉の形もなかなか崩れず、水底で黒くなった落ち葉が堆積したような人工的に作られたドブになってしまいます。(いわゆる腐敗したと言われる状態)

 水分が少ない場合は補充を。水分が多すぎる場合は乾いたもみ殻や草などを入れて調節しましょう。

使う水は水道水でも良いか

「水道水の塩素で微生物の活性が抑えられるので、溜めた雨水や1日置いた水を使う」という話があるようですが、私としては全く水道水でも発酵に影響はないと考えてます。(水道水は微生物のエサとなる有機物が入っていない状態であり、給水栓から出たときに確実に衛生的であるようにするために最低限遊離塩素が残るように処理されている。しかし、水道水に砂糖を混ぜて放置すればたちまち菌が繁殖する。水道水は殺菌剤ではない。)

 とはいえ、わざわざ水道水を使うのは金銭的にもったいないという点もありますので、雨水を溜めることができたらそれを利用した方が良いでしょう。私は春先に腐葉土を作り始めるので、庭に残っている雪を突っ込んでいます。

腐葉土作りの作業⑤ 切り返しをして空気を含ませる

 材料を積んだ後は、空気に触れさせるために定期的に全体を混ぜます(撹拌・切り返し)。発酵がムラなく均一に進むように、よく撹拌します。

 発酵を開始後の最初の1か月は1~2週間に1回程度、切り返しの回数を多めにすると良いです。その後は1か月に1回程度、撹拌をすると良いでしょう。

 切り返しは、微生物の好気的な反応を進めるために必要な作業です。分解初期に活躍するカビや枯草菌(納豆菌など)は好気性菌という酸素が必要な菌ですので、増やすためにしっかりと空気に触れさせます。

 酵母や乳酸菌、その他多くの細菌は条件的(通性)嫌気性菌であり、酸素があってもなくても生きられる菌ですが、酸素がある環境と酸素がない環境では微生物のエネルギーの作られ方が変わります。

 酸素があれば、落ち葉などの有機物の炭素を最終的に二酸化炭素(CO2)として空気中へ放出するエネルギー産生の反応が進みますが、酸素がなければ乳酸やアルコールを生成する反応を進めてエネルギーを作っています。酸素がある方がエネルギーを効率的に生み出すことができ、微生物も活発に働きます。

 実は落ち葉を腐葉土にする重要な目的の一つは、落ち葉に含まれる炭素の量を減らすことです。炭素が多いままだと、畑に入れることはできません。

 増加した微生物の細胞の構造に炭素を利用してもらう

 微生物のエネルギーを得る過程で、酸素と落ち葉の炭素を二酸化炭素へ変換してもらい空気中へ放出してもらう

このようにして、落ち葉の炭素を消費する必要があります。炭素を減らすことで、堆肥の分解で畑の肥料分の窒素が余計に消費されるのを防ぎます。

 微生物は空気中の酸素を消費しますので、発酵途中で撹拌して通気性をよくして空気に触れさせることが大切です。

 また、有機質肥料が多くてアンモニウム塩とアンモニアガスが出てきている場合でも、硝化菌がアンモニウムを亜硝酸・硝酸へ変換する反応をする際に多くの酸素を使います。できた硝酸は肥料成分になります。

枯れ葉を腐葉土にする理由

作物の窒素飢餓を防止する

 落ち葉に含まれる炭素と窒素の割合はおよそ40:1です。そのまま落ち葉を畑へ入れると炭素の量が多く、微生物が落ち葉を分解する際に窒素が足りなくなり、畑の肥料分の窒素を使ってしまいます。そうなると作物の栄養分になるはずだった窒素が無くなり、作物が窒素飢餓になって生育不良を起こしてしまいます。また炭素の比率が大きいほど、微生物の分解に時間がかかります。

 安心して畑に使える堆肥の炭素と窒素の割合は、20:1~10:1の範囲と言われています。微生物細胞のC:Nは10:1くらいですので、その比率まで炭素の量を減らすと窒素飢餓が起こりにくくなります。

 逆に炭素の割合が10よりも低く窒素の量が多い堆肥(鶏糞堆肥など)は、微生物による分解が早く、微生物は余剰になった窒素を土の栄養分として供給します。このような堆肥を使う際には、窒素過多にならないように肥料分を調整する必要があります。

 炭素と窒素の割合は炭素窒素比(C/N比)と呼ばれ、肥料の品質表示の項目で記載されています。

二酸化炭素による酸欠を防止する

 また腐葉土にする理由としてはもう一つ、二酸化炭素による作物へのガス害を防ぐ点があります。

 先ほどお話しましたが、微生物の好気的なエネルギーを作る反応をした際には二酸化炭素(CO2)がでてきます。この二酸化炭素ガスが大量に出てくると、作物の種子の酸欠を起こして発芽を悪くしてしまいます。そのため落ち葉の有機物の分解がある程度進んで腐葉土となり、大量の二酸化炭素ガスが出てこなくなってから畑に使えるようになるのです。

腐葉土の完成

 腐葉土ができあがるまでの期間は、環境によって大きく変動します。早ければ4か月から半年ほどで完成しますし、2~3年かかる場合もあります。私の住む北海道では11月~4月半ばまでは気温が低く発酵が半年程度休止してしまうので、完熟腐葉土になるまでには2年ほどかかります。

葉の状態と色、悪臭がないか確認してみてください。葉がほろほろと崩れて、色が黒くなり、臭いが無くなったら完熟腐葉土の完成です。

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