自分の畑に毎年家畜ふん堆肥や化学肥料などを撒いていると、作物が吸収できなかった分の栄養分が過剰に土壌に残っていないか気になることはありませんか?
あまりに過剰な栄養分が残ると、環境や作物に影響が出てきてしまうので適度に施肥量を調整する必要があります。窒素過多、カリウム過多による生育障害はよくあるお話です。
環境に与える影響であれば、
窒素を過剰施肥し続けると、作った野菜に硝酸性窒素が多く含まれるようになったり、周辺の地下水や河川が硝酸態窒素・亜硝酸態窒素で汚染されます。この硝酸態窒素・亜硝酸態窒素は水道局の水質検査で必ず検査している項目です。(硝酸性窒素・亜硝酸性窒素とも言われます。)
硝酸態窒素・亜硝酸態窒素を大量摂取すると体内のヘモグロビンと亜硝酸態窒素(硝酸態窒素も体内で亜硝酸態窒素になる)がくっ付いてメトヘモグロビン血症を引き起こす事が知られています。(ただし硝酸態窒素を亜硝酸態窒素に還元する微生物はpHが低いところでは増殖できないので、胃内のpHがまだ高い離乳食が始まる前の乳児が摂取した場合や、大人でも大量摂取して一部の硝酸態窒素が口腔内で還元された場合になることがあります。)
過去に大規模な畑で大量の窒素肥料を使ったことによる地下水汚染が問題になったので、今では定期的な水質検査をし管理されているので安全になっています。野菜に含まれることもありますが、含まれる量は多くはなく身体には影響ないでしょう。
家庭菜園という小規模の畑ですが、環境保全と身体に優しい野菜を作るという点では、むやみやたらに肥料を使うべきではなく適切な量を使っていきたいものです。私の家の周りには、蛙やカナヘビ(カナチョロ)、多様な虫たち、野良猫やキツネ、野鳥などの野生動物に恵まれていますので、周辺の生態系を崩したくないという気持ちがあります。
良い野菜を作るだけではなく、環境にも良い家庭菜園を目指しましょう。
さて、自分の土壌がどのくらい栄養分を持っているか調べる方法ですが、
私の場合はECメーターと簡易土壌検査キットみどりくんを使っています。
今回はこの簡易土壌検査キットみどりくんがどんなものか、実験的に使ってみた結果を紹介したいと思います。
農大式簡易土壌診断みどりくん
使い方は簡単。大体15㎝くらいの深さの畑の土を付属のシリンジに5mLのところまで取り、ボトルに土を入れて、50mLのラインまで精製水を入れて振り混ぜて、試験紙を浸して色を比較するだけです。
実際に実験的にどのように試験紙が反応するか、水道水と市販の液肥を使って見てみました。
使った液肥は、窒素リン酸カリウム6:6:7のこちらを適当に水で薄めました。実際使う際には2Lで薄める量を、今回はかなり濃く約100mLでしか薄めていないので検査結果は上限まで出るはずです。
まずは普通の水道水の硝酸態窒素
予想通りです。硝酸態窒素は下限値で結果が出ています。硝酸態窒素がほぼ含まれていない水道水なので、0でOKです。この試験紙のpHの結果は気にしていません。(畑のpHの測定は地面に差し込むタイプの測定器を使っているためです。)
続いてリン酸とカリウム
うーん。見づらい。
裏側のフィルムの方から色を見てくださいと説明書には書いてあるのですが、これだとリン酸は7mg/L、カリウムは50mg/Lに見えます。水道水のリン酸もカリウムも、この試験紙では測れないほどのごく少量しか含まれていないはずですが…。
フィルム側ではなく表側から見てみます。
カリウムは、こちらの方が正しい色味になっている気がします。試験紙のフィルム側に偏って付いている青色の試薬が、色を判別するのを難しくしているようでもあります。
これが試験する前の試験紙。フィルム側から見た方です。
ついでに、ECメーターで電気伝導率を測ってみました。水道水のECは148μS/cmでした。地元水道局で公表されている数値とほぼ同じです。
こちらのECメーターは温度も測定してくれます。(温度が上がると電気伝導率は高くなります。残留肥料分を調べる目的である土壌診断の場合では、25℃前後で測っていれば問題はないです。)
次に濃い液肥を使って、同様の実験をやってみます。
硝酸態窒素は上限です。試験紙が強い赤になっています。
リン酸はハッキリと色が変わらず、カリウムは全然違う色になってしまいました。
カリウムは真っ青です。「こんな色無いよ!!」とツッコミを入れたくなるほどに、比較表から外れてます。
リン酸の方は、土の色が混ざるともっとグレーに近づいた色になるのかもしれません。これだと17mg/Lかなと判断してしまいそうになりますが、試験したのはとんでもなく濃い肥料分が入っている液肥…。そんな量ではないはずです。時間が経過したら、だいぶ上限の33mg/Lに色が近づいてきました。
液肥のECは7428μS/cmでした。やはり濃い液肥。ECはとんでもなく大きいです。
検査判定をしてから少し時間が経過してしまいましたが、水道水と液肥を使った試験紙の比較です。
今回実験をしてみた結果から、
・硝酸態窒素の判定はほぼ適切で、簡易土壌診断としては十分使える。
・カリウムの判定は、試験紙の色味が裏の比較表と異なることが判明。この試験紙では真っ青になるようであればカリウム過剰。フィルム側の試薬の色が強いため判定を難しくしており、カリウム過多の状態の試験紙の状態を知らなければ結果の判断を誤る可能性あり。
・リン酸のピンク~グレーの色はハッキリと区別しづらく、こちらも判定を誤る可能性あり。試験結果は信じすぎず、参考までにした方が良いかもしれない。
以上が私の考察になります。
ちなみに、こちらは昨年みどりくんを使ってみた様子です。
この時はカリウムとリン酸が過剰だと間違って判断して少なく施肥してしまい、作物が上手く育ちませんでした。簡易土壌診断の判定ミスという経験を積ませてもらいました。(これも勉強!)
今年は肥料が少なかったので、来年はしっかり施肥します。
とりあえずは自分の畑では残留肥料分はまだ問題ない状態のようですが、毎年牛ふん堆肥を入れている分のでカリウム過多を頭の隅には入れておかないといけません。とりあえずは春先に簡易土壌診断キットを使って、異常なカリウムと窒素の量がないことをチェックしていこうと思います。
リン酸はどうしようかな…と考えていますが、リン酸過剰でも作物は育ちますしリン吸着をしやすい黒ボク土の畑なので少し多めに施肥しつつ、しばらく作物の育ち具合を見てやっていくしかないかなと。そのうち作物の成長が安定したら、リン酸は野菜に使った分だけ施肥するようにする方向で行きたいです。
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